自閉スペクトラム症の子どもの言語スキルはどのように高められるのでしょうか?

[吹き出し部分] (左上) ママ!ボール投げた! (右上) あら!ボールを投げたんだね! (右下) 赤いボールを投げたんだね! – 赤いボールを投げたんだね (左下) ボールを取ってきてくれる? – いいよ!

相手との双方向のやりとりは、ことばの発達の土台になります。例えば、一人が話しかければ、すぐにもう一人もそれに応答します。もし、自分の問いかけに対して相手が5分も経った後に返答してきたら、とても不自然に感じるでしょう。また、相手がこちらの問いかけとは全く無関係な話題を脈絡なく返してきた場合も、びっくりするかもしれません。ある話題に即した反応をただちに返すことは「随伴的反応」(contingent response) と呼ばれます。養育者が子どもに対して随伴的反応を示すことは、子どもの言語発達を支える重要な要素のひとつだといわれています。随伴的反応は、特に自閉スペクトラム症 (Autism Spectrum Disorder; ASD) をもつ子どもとの関わりにおいて重視されています。

ASDとは、いわゆる発達障害の一種であり、他者との社会的コミュニケーションにおいて特徴的な点が見られるといわれています。ASDをもつ人は、相手の目を見たり、会話におけるターンテイキング (話す-聴くの順番を交互に入れ替えること) を維持したりすることが難しい場合があります。随伴的反応は、このような特性をもつASD児の言語発達を支援するのに役に立つと考えられています。やりとりを続けたり、話題に沿って話したりする体験に繋がるからです。

このときに大切なのは、子どもと同じ目線になることです。たいていの場合、子どもとの時間は姿勢を低くして、床に近い位置でとることになるでしょう。こうした時間は、他者とやりとりするための土台となる力を育むことに繋がります (「フロアタイム」(floor time) と呼ばれることもあります)。ここで重要なのは、子どもの発言や行動に「随伴的」に応答することです。例えば、子どもが 「イヌ」と言ったとき、その言葉の意味を広げて 「うん、ふわふわしているだね」と返したり、子どもの発話をそのまま繰り返して「イヌだね」と発話したりするといった方法が考えられます。子どもの発話にすぐに返すこと、そして、子どもの発話に関連する内容にすることが大切です。

もちろん、仕事や家事をしながら一日中しっかり子どもの相手をすることは難しいかもしれません。ですが、一日のなかで少しだけでもこのような時間をつくることが、発達の支援に繋がる可能性があります。「他者とやりとりすることの楽しさ」をお子さんと共有できるといいですね!

科学的な参考資料:

Haebig, E., McDuffie, A., & Weismer, S. E. (2013). Brief report: Parent verbal responsiveness and language development in toddlers on the autism spectrum. Journal of Autism and Developmental Disorders, 43(9), 2218-2227.

Siller, M., & Sigman, M. (2002). The behaviors of parents of children with autism predict the subsequent development of their children’s communication. Journal of Autism and Developmental Disorders, 32(2), 77-89.

Goldstein, M. H., & Schwade, J. A. (2008). Social feedback to infants’ babbling facilitates rapid phonological learning. Psychological Science, 19(5), 515-523.