身体を動かすことも読むことの学習につながるのですか?

子どもが読み書きの力を身につけるとき、よく言われるのは、まずは文字を判別できるようにすることが大事だ、ということです。たとえば、周りの大人が文字を指差し、子どもにその文字の読み方を尋ねる、といった教え方をすることがあるかもしれません。読むことは確かに視覚的な (点字の場合は触覚的な) プロセスが中心ですが、視覚以外のさまざまな方法で文字と関わることで、読むことに必要な知識をしっかりと定着させることができます。犬の種類を見分けるときに、公園で一緒に遊んだことのある犬の方が、単に写真で見たことしかない犬よりも犬種の特定が簡単ですよね。それと同じです!

特に、文字をどう書くかを学ぶことは、文字の判別ができるようになることに役立ちます。紙の上でペンを使って文字をなぞってみても良いですし、空中で指を使ってなぞってみるのだって良いでしょう。ただし、とても小さい子どもの場合は、ペンと紙を使うのに必要な微細運動スキル (手指の小さな筋肉を正確に動かすこと) がまだ十分には身についていません。そのようなときは、微細運動スキルを補うために、代わりに粗大運動スキル (大きな筋肉を動かすこと) を使って文字を書いてみるという方法があります。腕全体を使って海辺の砂浜で文字を書いてみたり、体全体を使って雪の上に足跡で書いた文字を残したり…。何歳であっても、粗大運動スキルを使うことは、読む練習の補助になります。なぜなら、それによって、子どもたちは机の前に座っている長くて単調な時間とは違った、新鮮な体験ができるからです。粗大運動を用いて読む練習をすることで、子どもが文字を見たときに「あ、この文字知ってる!」と思いやすくなるかもしれません。ですから、子どもに読み方を教えるときには、汚れてしまうことを恐れずに手 (や足) を使ってみると良いでしょう!

科学的な参考資料:

Longcamp, M., Zerbato-Poudou, M. T., & Velay, J. L. (2005). The influence of writing practice on letter recognition in preschool children: A comparison between handwriting and typing. Acta psychologica, 119(1), 67-79.

Longcamp, M., Anton, J. L., Roth, M., & Velay, J. L. (2003). Visual presentation of single letters activates a premotor area involved in writing. Neuroimage, 19(4), 1492-1500.

Guilbert, J., Alamargot, D., & Morin, M. F. (2019). Handwriting on a tablet screen: role of visual and proprioceptive feedback in the control of movement by children and adults. Human movement science, 65, 30-41.

このコミックは,Jessica Guilbert博士とのコラボレーション作品です!