子どもたちはどうやってあんなにも容易くことばを覚えるのでしょうか?

子どもたちは、ほとんど何の苦労もなくことばを習得しているように見えます。これは、私たち大人が第二言語を学ぶときに直面する困難とは正反対です。さらに驚くべきことに、子どもたちは母語、つまり答え合わせできるような対照表 (辞書やワークブック) がない言語を習得しています。

子どもたちが「ことばを学ぶ」という膨大なタスクをこなしていくための方法のひとつとして、すでに知っている事柄を将来の学習のためのガイドにする、というものがあります。たとえば、18ヶ月児は、新しい単語の意味を理解するために、文法の手がかりを使うことがあります。大人も、知らず知らずのうちにこの方法を適活しています。ちょうど今、あなたがそうしたように。さっきの文に新しい単語があったのですが、気づきましたか?

「適活する」という単語は、恐らく初めて聞いた単語だったのではないでしょうか? それもそのはず、この単語は造語なんです。でも、ほとんど自然に、「適活する」という語を (どんな行為か具体的にはわからなくとも) 「大人でも子どもでもできる、何らかの行為をしめすことば」だと解釈したのではないでしょうか。一方で、もし「ここにある適活は…」などと書かれていたら、「適活」というのは何かしらのモノなんだろうな、と推論したと思います。このように、言語的な文脈 (文法など) は、単語の意味についての手がかりとして活用できるのです。

言語的な文脈は、ほかのタイプの文脈と同じように考えることができます。新しい電化製品をキッチンで見かけたら、それが何なのか正確にはわからなかったとしても、調理のために使うものだろうと考えることでしょう。同じように、たとえば「いぬ」などの新しい単語が「名詞の文脈」のなかで出てくれば、具体的な指示対象はわからなかったとしても、その単語はおそらく生き物やモノをあらわしているのだろう、と考えるはずです。

子どもたちはこうした「文法と語彙の関係」を素早く学ぶことができ (しかも30分未満で!)、そうやって学んだ関係性をうまく使って、新しい単語を習得することができるそうです。スゴイですね!

子どもたちはことばを学ぶにつれて、ことばを学ぶ足場となる「自分用のガイド」を作り上げていきます。子どもたちはまさに、言語習得の達人だといえるでしょう。

科学的な参考資料

Gleitman, L. R., Cassidy, K., Nappa, R., Papafragou, A., & Trueswell, J. C. (2005). Hard words. Language Learning and Development, 1(1), 23-64.

Barbir, M., Babineau, M. J., Fiévet, A. C., & Christophe, A. (2023). Rapid infant learning of syntactic–semantic links. Proceedings of the National Academy of Sciences, 120(1), e2209153119.