今の時代に手で書くことを教える必要はあるのですか?

最近では、メールからレポート、ツイッターでの投稿にいたるまで、何かを書くときはほとんどキーボードを使います。子どもに書き方を教えるとき、キーボードから始めるのも、一見良いように思えるかもしれません。タイピングは手で書くよりずっと簡単に見えますから……。子どもがペンを使うときの不器用な手の動きを考えても、そう感じるのではないでしょうか。

しかし、手で書くことは、タイピングとは違った点で、読み書きの力を身につけるのに役立ちます。キーボードで文字を打つことは、単に対応する文字を見つけることと同じだといえます。つまり、紙に書かれた文字のうちの1文字を子どもに指差してもらったり、文字の書かれたたくさんのカードの中から、ある文字を探してもらったりすることと同等だということです。一方、手で書くときには、文字を特定するだけでなく、文字を構成する線に沿って手を動かすことが必要です。このような手の動きは、文字を識別することそのものを支える重要な発達の土台になります。したがって、手で文字を書けるようになることは、文字を読めるようになること、そしてタイプできるようになることにも繋がっています!

手で書くことは、文字を学ぶことを促進するためのひとつの方法です。けれども、幼い子どもにとっては、手で書くことはかなり難しいかもしれません (「身体を動かすことも読むことの学習につながるのですか?」もご覧ください)。特に、発達性協調運動障害のように、運動の不器用さを抱えている場合には、さらにハードルが高くなるでしょう。大切なのは、書くことについてのさまざまな活動を行い、それぞれの活動で足りない部分を補い合うこと、そして、書くことを習得する方法はひとつだけではないことを忘れないようにすることです!

科学的な参考資料:

Longcamp, M., Zerbato-Poudou, M. T., & Velay, J. L. (2005). The influence of writing practice on letter recognition in preschool children: A comparison between handwriting and typing. Acta psychologica, 119(1), 67-79.

Bonneton-Botté, N., Guilbert, J., & Bara, F. (2019). L’écriture manuscrite: un apprentissage moteur spécifique. ANAE-Approche Neuropsychologique des Apprentissages Chez L’enfant.

Bara, F., & Bonneton-Botté, N. (2018). Learning letters with the whole body: Visuomotor versus visual teaching in kindergarten. Perceptual and Motor Skills, 125(1), 190-207.

このコミックは,Jessica Guilbert博士とのコラボレーション作品です!