ろう児の読み書きの力を育てるためには、どのような土台が必要なのでしょうか?
「リテラシー」(読み書きの力)と聞くと、字の形や字を書くときの手の動きなどが思い浮かぶと思います。けれども、リテラシーとは「子どもが読み書きを覚える段階になって初めて身に着ける力」というわけではありません。 リテラシーの基礎は、実は子どもが初めて話し言葉を学ぶときからすでに始まっています。
例えば、Kotobooで「言語発達にはバムくことが大事です!」という内容のコミックが出たとしましょう。このとき、「バムく」という知らない単語に対して、「なんて読むの?」「この単語はどういう意味?」などと思ったり、文章をもう一度読みなおしたりするかもしれません。実は同じようなことが、読み書きを覚え始めたばかりの子どもにも当てはまります。大人と同様に子どもにとっても、知らない単語を読むよりも、すでに知っている言葉を読むほうが簡単です。
話し言葉と書き言葉とが同じ言語である聴児にとっては、両者の繋がりは直観的です。ですが、ろう児の場合は、話し言葉が手話言語であるのに対して、書き言葉は音声言語に対応した別の言語になるので、この繋がりはあまり直観的ではありません(例えば、音声言語のフランス語とフランス手話とは、フランス語と英語のように異なる言語だといえます)。そして、聴児の場合もろう児の場合も、読み書きを覚え始めるよりも先に学んできた音声言語や手話言語といった話し言葉における語彙力が、就学後の「読む力」を予測できる最も重要な要素であることが知られています。
そのため、ろうの子どもの読む力を育むためには、その土台となる「手話で知っている語彙」を早い時期から増やすことが大事だといえるでしょう!
科学的な参考資料: