バイリンガル児の語彙を育てるために一つ一つの言葉を翻訳してあげた方がいいのでしょうか?

みなさんは、学校での第二言語(英語)の勉強で作った単語帳、そしてその中の単語を覚えているでしょうか? catはねこ、dogはいぬ、mouseはネズミ、などなど。。。ずらっと並んだ単語のリストは、眠りを誘うこともあったでしょう。このように、第二言語教育の多くは、その言語の単語と母語の単語との対応をひたすらに繋げるものです。

しかしながら、バイリンガル児は言語をそのようには習得しないようです。どの時期に、またはどこでそれぞれの言語に触れたかにもよりますが、2つの言語の語彙の範囲はほんの少ししか重なっていないことがあります。例えば、家では日本語を、そして学校ではフランス語を聞いている子どもの場合、「お風呂」や「フライパン」などの単語は日本語でおぼえる一方で、「黒板」や「ジム」などの単語はフランス語でおぼえているかもしれません。バイリンガルの子どもは、それぞれの言語の語彙を独立に学んでいるという報告もあります。そうすることで、同じ事柄を示す単語をそれぞれの言語で混乱なくおぼえることができるのです!

たとえるなら、バイリンガル児の言語習得とは、ふたつの別々のカゴに異なる種類のフルーツを仕分けながら満たしていくようなものだと言えるでしょう。おばあちゃんと一緒だと梨をとるかもしれないし、いとこと一緒だとキウイをとるかもしれません。お母さんと一緒だと桃をとるかもしれないし、はたまたお父さんと一緒だとオレンジをとるかもしれません。

それぞれの言語に対して、質的にも量的にも濃いふれあいの時間を過ごすことはとっても大切です。バイリンガルの子どもは、言語をより多く聞けば聞くほど、言葉を理解し、新しい言葉を覚えるのが早くなります。バイリンガルの子どもの語彙を育てるには、フルーツ (つまりは言語) との有意義なやりとりをすることがコツだと言えるでしょう!

科学的な参考資料:

Hurtado, N., Grüter, T., Marchman, V. A., & Fernald, A. (2014). Relative language exposure, processing efficiency and vocabulary in Spanish–English bilingual toddler. Bilingualism: Language and Cognition, 17(1), 189–202.

Marchman, V. A., Fernald, A., & Hurtado, N. (2010). How vocabulary size in two languages relates to efficiency in spoken word recognition by young Spanish-English bilinguals. Journal of Child Language, 37(4), 817–840.

Pearson, B. Z., Fernández, S. C., Lewedeg, V., & Oller, D. K. (1997). The relation of input factors to lexical learning by bilingual infants. Applied Psycholinguistics, 18(1), 41–58.

Tsui, R. K.-Y., Gonzalez-Barrero, A. M., Schott, E., & Byers-Heinlein, K. (2022). Are translation equivalents special? Evidence from simulations and empirical data from bilingual infants. Cognition, 225, 105084.