言語間の類似性は、バイリンガル児が2つの言語を習得するのに役立ちますか?

みなさんは、ある言語と別の言語がとても似ていると感じたことはありませんか? たとえば、イタリア語が母語の人はスペイン語の単語をいくらか聞き取ることができるかもしれません。一方で、全然違うと感じる言語の組み合わせもあるでしょう。イタリア語が母語の人は、中国語の単語をまったく聞き取ることができないかもしれません。

バイリンガルの子どもが習得する言語はそれぞれ異なっていますが、なかには互いに似たような発音をしたり、同じ意味をもったりする単語があります。このような語は同根語 (cognate) と呼ばれます。たとえば、日本語とフランス語を習得している赤ちゃんは、バナナがフランス語では「banane」、日本語では「バナナ」と呼ばれることを学ぶでしょう。バイリンガルの赤ちゃんは、このような同根語となる単語を、同根語でない単語よりも早く習得することが研究によって示されています。「なるほど! 似た発音の単語は同じ意味なのか!」ということを、赤ちゃんは発見しているのかもしれません。

また、バイリンガルの子どもが学ぶ単語は、それぞれの言語で異なる発音だったとしても、意味としては同じになるものが大半を占めます。こうした単語同士は、翻訳等価 (translation equivalent) であると呼ばれます。たとえば、フランス語で犬を意味する「chien」は、日本語の「犬」という単語に置き換えることができます。

その一方で、翻訳等価であるとは言えない単語ももちろんあります。英語では「brother」の一単語で表現できる内容でも、日本語では年上か年下かによって「兄」「弟」のように異なる単語を使います。このように、言語ごとに意味カテゴリーの作り方が異なる場合があるのです。ほかにも、英語の「slush」(とけた雪) に相当する単語はフランス語には存在しないというように、単語同士が2つの言語間でまったくことなる場合もあります。フランス語では、この単語は「neige fondue」(とけた雪) のように表現することになるでしょう。

このように、バイリンガルの子どもたちは、各言語における単語同士のさまざまな種類の対応関係を上手に見つけていかなければなりません。でも、この過程を簡単にするトリックを、彼らはどうやらもっているようなのです! 次回はこのトリックについてご紹介したいと思います。

科学的な参考資料:

Bosch, L., & Ramon-Casas, M. (2014). First translation equivalents in bilingual toddlers’ expressive vocabulary: Does form similarity matter?. International Journal of Behavioral Development, 38(4), 317-322.

David, A., & Wei, L. (2008). Individual differences in the lexical development of French–English bilingual children. International Journal of Bilingual Education and Bilingualism, 11(5), 598-618.

Pearson, B. Z., Fernández, S., & Oller, D. K. (1995). Cross-language synonyms in the lexicons of bilingual infants: One language or two?. Journal of Child Language, 22(2), 345-368.