読み書きの力の土台にはどんなものがありますか?

一見すると、「読めるようになる」というのは、単純に記号(文字)と音とを一致させることができるようになる、というだけのように見えます。しかし、「読める」ということはそれだけのことではないのです。

「読めるようになる」ためには次の3つの原則があります。

まず、子どもたちは、周りに見えるものののなかに、ことばを表す記号があるということを知る必要があります。お店の看板、バスの停留所の名前、パスタのブランド名などがこれに当てはまります。文字で記されたことばは身の回りのあらゆるところにあります。そのことを子どもに伝えるのは、読み書きの世界に子どもを誘うための最初のステップです。

次に、子どもたちは「記号にはある特定の形がある」ということを理解しなければなりません。たった一つの文字に対して、フォントや書く人によってさまざまな形のバリエーションがあることを考えてみると、お店の看板や、バス停の表示、パスタのパッケージなどに記載されている記号が同じものだとわかるのはすごいことなのです。街なかを歩いているときやお店で列に並んでいるとき、子どもの名前や、子どもの好きな本のタイトルに入っている文字を探して、「アヒルの『ア』だね」などと教えてあげると、とても楽しい遊びになるかもしれません。

最後に、読むことを書くことに結びつける必要があります。当たり前だと思うかもしれませんが、誰かが文字を書いて初めて、他のひとはその内容を読むことができるようになります。書かれた文字が正しいかどうかにかかわらず、子どもに書くように促すこと自体が、読むことと書くこととを結びつけるための足がかりになります。単語のなかの文字を入れ替えたり、声を使わず文字だけでメッセージを交換し合ったりするなど、オリジナルのゲームをつくってみても良いかもしれません。

夏目漱石の本に挑戦するようなレベルになるまでに、たくさんの学びのステップがあります。ゆっくりと、楽しみながら学ぶことが何よりも大切です。

科学的な参考資料:

Justice, L. M., & Ezell, H. K. (2001). Written language awareness in preschool children from low-income households: A descriptive analysis. Communication Disorders Quarterly, 22(3), 123-134.