子どもに話す時、異なる言語を混ぜて話しても良いのでしょうか?

2つ以上の言語を話す養育者であれば、会話中にそれらの言語を入れ替えながら使うということがよくあると思います。このような言語の入れ替えのことを「コードスイッチング」(Codeswitching) と呼びます。1つの会話内で、1つの文章をある言語で言った後、次の文章を別の言語で話す、というのがコードスイッチングの1つです。たとえば、「You have your backpack? いってらっしゃい!」(リュック持った?いってらっしゃい!) といった発話が挙げられます。また、「Let’s go to 温泉!」(温泉に行こうよ!) のように、1つの文の中で、一部分はある言語で、残りの部分は別の言語で話すといった例もあります。

どのように、またはどのくらいたくさんコードスイッチングを行うかは、文化や個々の家庭によって、さらには個人によってさまざまですが、「自分がどんなコミュニティに属していると感じるか」に関連している場合もあります。例えば、北アメリカ大陸に住んでいて、英語を母語とするラテン系の人々にとっては、頻繁なコードスイッチングをすることが、ラテン系コミュニティに属しているというアイデンティティの一つになっています。ほかにも、レバノンでは、英語・フランス語・アラビア語という3つの言語間でコードスイッチングすることはよく行われています。しかも、ひとつの文の中で3つの言語を入れ替えることもあるそうです!

バイリンガルの養育者が子どもに話しかけるとき、どんなコードスイッチングのパターンを使っているかという点に焦点を当てた研究は、実はほとんどありません。ただ、子どもが成長するにつれて養育者のコードスイッチングは増えていくようだということを示唆する研究はいくつかあります。このような傾向が見られる理由の1つとして、養育者の子どもに対する話し方は子どもの年齢によって変わっていくということが挙げられます。一般的に、より子どもの年齢が高くなるほど、養育者の発話はより長く複雑になります。そして、長い発話になるほどコードスイッチングの可能性は高くなるのです。ほかの理由として、年齢の高い子どもほど話す量も多い、ということもあります。多く話せば、子どもが別の言語で返す割合も増え、それを受けて養育者が言語を入れ替えることも多くなる、といった可能性が考えられます。

大切なのは、あなたが直感的にもっとも心地よく感じる話し方で、子どもに話しかけることだと思います。このことを、心に留めておいていただけると幸いです。

次回は、子ども自身のコードスイッチングと、それが言語発達にどのように影響するのかについて迫ります。お楽しみに!

科学的な参考文献:
Kremin, L. V., Orena, A. J., Polka, L., & Byers-Heinlein, K. (2020). Code-switching in parents’ everyday speech to bilingual infants. PsyArXiv.

Poplack, S. (1988). Contrasting patterns of code-switching in two communities. In M. Heller (Ed.), Codeswitching: Anthropological and sociolinguistic perspectives (pp.215-244), Berlin: Mouton de Gruyter.

Woolard, K. A. (2004). Codeswitching. In A. Duranti (Ed.), A companion to linguistic anthropology (pp. 73-94). Malden, MA: Blackwell.